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東京地方裁判所 昭和55年(特わ)99号 判決

本籍

東京都板橋区徳丸三丁目一二三番地

住居

同都同区徳丸三丁目二〇番一四号

保育園及び幼稚園経営

田中鑛四郎

大正一三年八月二一日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官八代宏出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一九〇〇万円に処する。

右罰金を完納できないときは金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、東京都板橋区徳丸三丁目二〇番地一四号において「北野保育園」を、埼玉県富士見市大字鶴馬字下郷三、五一三番地において「富士見台幼稚園」をそれぞれ経営し、昭和五三年八月不動産を譲渡したほか、同五一年一月以降貸付金や預金にかかる利子収入を得ていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、保育園等の入園料収入の一部や利子収入を除外して簿外預金を設定する等の方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和五一年分の実際総所得金額が五三、三七〇、七〇五円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五二年三月一二日同都板橋区大山東町三五番地一号所在の板橋税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が一四、二八四、〇八一円でこれに対する所得税額が三、八七二、六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額二六、五九四、八〇〇円(税額の算定は別紙(四)税額計算表参照)と右申告税額との差額二二、七二二、二〇〇円を免れ

第二  昭和五二年分の実際総所得金額が六一、九八〇、八九六円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五三年三月一三日前記板橋税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が一七、六八九、四八七円でこれに対する所得税額が五、四一九、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額三一、九四七、五〇〇円(税額の算定は別紙(四)税額計算表参照)と右申告税額との差額二六、五二八、五〇〇円を免れ

第三  昭和五三年分の実際所得金額(分離課税短期譲渡所得の損失の金額一、三〇一、五一七円を控除した後の金額)が六六、三三七、四四八円(別紙(三)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五四年三月八日前記板橋税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が一七、一七六、三七八円でこれに対する所得税額が五、一四六、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額三四、九八七、〇〇〇円(税額の計算は別紙(四)税額計算表参照)と右申告税額との差額二九、八四一、〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全般の事実につき

一  被告人の当公判廷における供述及び検察官に対する供述調書(三通)

一  被告人に対する収税官吏の質問てん末書(二通)

一  押収してある所得税確定申告書三袋(昭和五五年押第三六五号の一、三、五)及び所得税青色申告決算書三袋(同押号の二、四、六)

別紙(一)、(二)、(三)の修正損益計算書に掲げる各勘定科目別当期増減金額欄記載の数額について

<各別紙〈1〉につき>

一  収税官吏作成の収入除外総括調査書(以下の調査書も作成者を記載したものを除き、収税官吏の作成)

一  北野保育園収入除外調査書

一  富士見台幼稚園の収入除外調査書

<各別紙〈2〉、別紙(二)、(三)〈22〉、〈24〉につき>

一  経費調査書

一  北野保育園の経費調査書

<各別紙〈3〉、〈4〉、別紙(一)、(二)〈5〉、別紙(二)、(三)〈16〉、〈23〉、別紙(一)〈20〉、〈21〉につき>

一  経費調査書

一  富士見台幼稚園経費調査書

<各別紙〈6〉、〈8〉、〈9〉、〈11〉、〈12〉、〈17〉、〈18〉、〈19〉、〈21〉、〈26〉につき>

一  経費調査書

一  北野保育園の経費調査書

一  富士見台幼稚園経費調査書

<各別紙〈10〉につき>

一  経費調査書

一  減価償却費調査書

<各別紙〈27〉、〈28〉につき>

一  板橋税務署長作成の証明書

<各別紙〈29〉につき>

一  預金利息収入調査書

一  利子所得調査書

<各別紙〈30〉につき>

一  非課税分離課税の預金利息調査書

<別紙(一)〈31〉、〈32〉につき>

一  五一年分離所得調査書

(法令の適用)

一  判示各所為

各所得税法二三八条一項(情状により各同条二項を適用し、所定刑中いずれも併科刑選択)

一  併合罪加重

刑法四五条前段、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(犯情重いと認める判示第三の罪の刑に法定の加重)、罰金刑につき同法四八条二項

一  労役場留置

刑法一八条

一  刑の執行猶予

懲役刑につき刑法二五条一項

(裁判官 須田贒)

別紙(一)

修正損益計算書

田中鑛四郎

自 昭和51年1月1日

至 昭和51年12月31日

〈省略〉

別紙(二)

修正損益計算書

田中鑛四郎

自 昭和52年1月1日

至 昭和52年12月31日

〈省略〉

別紙(三)

修正損益計算書

田中鑛四郎

自 昭和53年1月1日

至 昭和53年12月31日

〈省略〉

別紙(四)

税額計算表

〈省略〉

※1 52,158,000×65%-7,240,000=26,662,700

2 60,609,000×70%-10,240,000=32,186,300

3 64,933,000×70%-10,240,000=35,213,100

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